utete's comic and biology (ウテテの漫画と生物)

Mainly written in broken English. Mainly about comic books or biology. 最近日本語記事も書き始めました。

大学受験における生物選択について

対象

この記事は主に

  • 理科の選択科目に悩む高校生
  • 数学の苦手な理系選択者
  • 生物を選択したものの受験において不安がある高校生
  • 選択科目が大学に入った後どう影響するのかを知りたい人

等を対象にしています。 私は高校時代生物化学選択でした。私が選択科目の選択に悩んだ際、また受験生となり自身の選択が正しかったのか迷った際、同級生先輩含め周囲のほとんどが物理化学選択であったため相談相手がおらず不安に駆られました。私一個人の主観と経験に基づく記事であり、また私の受験当時と状況が異なっている可能性があるので正確性は保証できません。それでも生物選択に少しでも関心があり不安や疑問を抱えている方々の助けになれば幸いです。

目次

  1. 自己紹介
  2. 生物選択をお勧めしたい人
  3. 生物選択の悪評・欠点
  4. 生物選択の利点
  5. 最後に

自己紹介

私は大学生で、生物系の学部に所属しています。高校時代は理系を選んだものの数学が非常に苦手で、受験が終了するまで(というより大学に入った後すら)それを引きずりました。私は大学で生物や化学を学びたかったので文理選択に迷いはなかったのですが、生物をとるか物理をとるかにはかなり悩みました(高校の方針から化学をとらないという選択肢や地学という選択肢は最初からなかったです)。受験における生物選択に対する悪評(後で述べます)、自身の数式処理に対する苦手意識、先輩が物理に苦労する姿…。両者のメリットデメリットを比較しきれず、最終的には高校1年生の夏休み終わりまでに基礎でない物理や生物を(流す程度ですが)やってみて、受験戦略上自らにより適していると思った生物を選択をしました。

生物選択をお勧めしたい人

結論から言いますと、

  • 受験戦略上の観点では「物理基礎に苦労した、もしくは数学的操作が得意ではないけど文系科目が得意、でも理系に進みたい」というタイプ
  • 大学入学後の観点では「生物オンリーの学部(特に医学部)への志望がはっきりしている」タイプ

には生物選択のメリットがかなりあります。

生物選択の悪評・欠点

主に次の3点が考えられます。

  1. 生物を選択すると進学に際しての選択肢が大幅に狭まる
  2. 生物は勉強に時間がかかる割に得点がとりにくい
  3. 生物系の学科志望であっても、大学の物理・化学関係の教養科目で苦労する

1と2については私が生物を選択する際、周囲の人に特に頻繁に言われました(そして同様のことが複数のネット記事にも書かれていました)。3に関しては指摘されることはなかったのですが、大学に入ってからの私自身の実感です。以下で上記3点について私の見解を述べます。

進学の選択肢に関して

これは事実です。大学にもよりますが、工学部や理学部の一部学科は「物理を履修していたこと」を受験そのものの要件をしているところが多く、物理を選択しないとそういった学科への進学が受験前から不可能になります。逆に受験の要件に「生物を履修していたこと」がある場合もあります(特に看護系の学科に多い印象です)。いずれにせよ行きたい学部や学科が決まっているならばそこの受験要項をあらかじめ確認し、受験直前になり後悔しないようにしましょう。ただし物理が既習であることが要求されるケースは生物が既習であることを要求されるケースより多く、「理系に行くことは決めたが行きたい学科がはっきりしない」というタイプの人は物理を選ぶ方が選択肢を多く残すという点で無難と言えるでしょう。

生物の学習コストは物理より悪いのか?

これはその人のタイプによるが結論で、各教科の学習コストは人によります。私の周囲に関していえば、「数学(というより数式の処理)に苦手意識がある、物理基礎で苦労した」タイプの人については物理の学習コストが高くなりがち(勉強量当たりの成績の伸びが悪い)でした(ただし例外もそれなりの数います)。「一般的に学習コストが低いといわれていること」は「あなたにとって学習コストが低い」ことには直結しません。大切なのは物理に苦労しそうな気配が出ているのに、周囲の声に流されて安易に物理を選択すると後々余計な苦痛を味わう可能性があるということです。これは「物理と生物一科目の比較で」という話よりむしろ受験全体におけるモチベーションの観点からの話になります。

勉強時に強いストレスを感じる科目が複数あると全教科総合の勉強コストが高くなり、他教科の学習にも負の影響がでます。私は生物と英語の勉強は好きで、この2教科の勉強に関してはストレスを感じるどころか、楽しむような感覚で行えました。即ち、ある教科の勉強に疲労した際に「勉強」の中で息抜きの選択肢が複数あったため、勉強時間を削ることなく総合としての成績を伸ばしつつ息抜きができたのです。何が言いたいのかというと、受験に使用する(可能性のある)教科の中に「逃げこめる・楽しめる」ものを作っておくと、その科目単体で勉強時間の観点からはコストが高いとしても、受験期全体を通じた心理的な負担の軽減につながります。仮にあなたが「数学も好きでないし物理基礎もあまり…」というタイプであるにも関わらず、一般的な点の取りやすさ論や学習コスト論のみを理由にして物理を選択すると、勉強全体に対するモチベーションが低下しがちで、苦手教科以外にも負の影響が及びます。さらに受験本番に苦手科目が多い場合、「この数少ない得意科目では絶対に落とせない」といった余計なプレッシャーが発生するため、当日においても得意科目に負の影響が出ます。こういった点で、科目選択時に「教科全体で見て楽しめる科目が残るか」を考慮に入れることは非常に大切だと思います。
※「点の取りやすさ・学習コスト」については後程解説 します

大学入学後の苦労に関して

これは私の経験です。生物系の学科であっても1年時(場合によっては2年時も)に教養科目として必修で力学や電磁気学がある場合があります。また大学で「化学」を学ぶにあたっては量子化学など化学を物理的背景から説明する科目にも取り組まなければなりません。前者では物理未修者に対する配慮がある場合が多いようですが、後者については物理選択生物選択一緒に授業を受けることになります。即ち、生物選択だと(生物系の学科であっても)高校物理をある程度前提知識とされ、単位をとるのがしんどい科目が複数発生します。物理選択者であった友人に訪ねたところ、「物理的側面から化学を扱う科目において、高校物理から連結している部分はそう多くない」とのことでした。それでも前提知識の差や数式操作への慣れの違いはありますし、何より周囲の物理選択者が皆自身の分からないこと全てを分かっているような気持になって、私は猛烈な不安を抱えることになりました。

化学系の学科志望の場合物理的知識のウェイトはさらに重くなり、研究室選択時にも理論系研究室が選びにくくなって選択肢が狭まる等も予想されます。即ち、大学進学後の選択肢を思わぬ形で狭めないという観点からは、「化学がやりたい」という人の中で「生物に近い化学」をやりたいという具体的な目標がある人以外(単純に化学全体が好きというタイプ)については、物理選択の方がよい気がします。
※逆に生物系の科目に関しては大学でも当然生物選択者有利です。これも後程解説します。

生物選択の利点

主に次の3点です。

  1. 国語が得意・物語が好きなら強いし楽しい
  2. 知識定着後の学習コスト
  3. 生物系(特に医学系)学部における利点

国語強者や妄想大好きマンにとっての利点

まずは得点の取りやすさからの話をします。生物は「暗記科目」という印象を持っていないでしょうか。物理との比較時、暗記量が多くなるのは事実です。しかし特に2次試験において得点差が出るのは考察問題です。考察問題とは要は特定のトピックに対する説明文・実験の説明や結果から推測できることを記述する問題です。即ち、考察問題で得点をとるには(ある程度の前提知識は必要ですが)暗記力というよりも読解力が必要になります。ここが国語、特に現代文が得意なタイプの人が生物において強みを発揮できるポイントで、「時間制限がある中文章中から要点とそのつながりを把握し作問者の意図を把握する」ことが得意な人は生物受験者の中で大きなアドバンテージを持つことになります。まして「国語得意で暗記も得意、でも数式にはアレルギー」みたいな「なんで理系来たんだお前」タイプでは、生物を勉強し得点をとることはかなり楽になると思われます。

楽しさの観点でも2点メリットがあります。まず、国語で読む論説文なりを問題解きながら楽しめるタイプ(こういう考えがあったんだ、という発見が楽しめるタイプ)にとっては、おそらく生物の考察問題も楽しいです。考察問題においては暗記力より読解力という話は上述のとおりですが、そもそも考察問題では教科書に載ってないごく最近の発見をトピックとして扱う問題が数多くあります(伝統的・有名実験について考察させる問題もありますが)。こういった問題の場合、説明文を読む最中でも「こんな仕組みになってるのか」「こんなことが起こっているのか」というように、自身にとって未知の知識に触れる喜びを楽しめます
ここで注意しなくてはならないのが、大学によって知識重視か考察重視かはかなり異なるという点です。個人的な感覚では、一般的に大学の難易度が高いほど考察のウェイトが上がり必要暗記量は減少する傾向にあります。ただし医学系の大学(特に私立の医学部)はこの傾向にあてはまらず、こんなところまで聞かなくてもええやろ、みたいな非常に細かい知識まで問うてくる場合が多い印象です。各大学各学部の「暗記・考察のバランス」は年度によって大幅に変わることはないので、どちらかに自信がない場合は志望(するかもしれない)大学の過去問を一度見て判断した方がよいと思われます。

楽しさの観点からのもう一つのメリットは、物語を読むのが好きな人、特にカプ妄想とかはかどるタイプにとって生物は楽園です。具体的にいうと、僕は現役時代(というか今もですが)免疫分野で、その働きや特徴の違いから各細胞に脳内でキャラクターをつけて物語風に解釈するということを頻繁に楽しみました(「はたらく細胞」を脳内で自己生成する感じですね)。その他の多くの分野についても同様です。生物という教科で扱う対象は(当たり前ですが)生き物らしい挙動や性質を持つことが多く、(少なくとも物理よりは)物語的解釈(妄想)がはかどると思います。この「物語解釈」は生物の勉強モチベを上げるというだけでなく、学習効率を高める上でも非常に重要であるのですが、これに関しては次に述べます。

受験直前期の学習コスト

「生物は物理と比較して学習コストが悪い」と指摘する人・サイトは非常に多いですが、本当にそうなんでしょうか。結論から言うと、私個人としては生物は初期投資は大きめだが一通り学習を終えればむしろ他教科より楽であると思っています。これには生物の学習法が関係しています(生物の勉強法はいつかまた別でまとめます)。
先ほど述べた通り、生物は物語として解釈することで楽しむことが出来ますが、物語解釈には用語や事象を点の状態から流れがある状態、そして網目状につながりあう状態にするという効果があります。単語や事象1つ1つを暗記しようとするとその膨大な量に恐怖し、屈しがちです。しかし物語解釈行う際覚えようとする用語同士をキャラクター化することで、自然と「AとBはどういった関係で、どういったグループに属するのか」という縦横のつながりを含めた理解が生まれます。

抽象的な話になりますが、大量の知識をつながりのない点として持つと、それを落とした(忘れた)際に気づきにくいですし、拾うたびにその「点」がどういった属性を持ち…といった確認をせねばなりません。ここで知識を網目状につないだ状態で保持することで、ある「点」が抜けても網目状の抜けから「何が不足しているのか」を容易に判断でき、また抜けのある周囲の網目構造から「もともとここに何があったのか」を推定して埋めることが出来ます。この「網」による知識習得の有効性はおそらく全教科、全分野で共通で、数学や物理ができる方からは「そんなの数学や物理でだって同じだ」とお叱りを受けそうですが…。要は数式になじみがない方に関しては、自然言語を用いたキャラクター設定を行いやすい「生物」という教科は、網目状の理解を獲得しやすいということです。

網を完成させるまでは確かにそれなりに大変です(各分野内でストーリーを作って小さな網を作り、それをさらにつなげて大きな網にして…これはこれで楽しいんですが)。生物は数の限られた公式の意味理解、使用から学習が開始する物理と比較して「基礎」が確立するまでは時間がかかるでしょう。しかし一度「高校生物全体の網」が完成すれば、先ほど述べた通り生物は知識が抜けにくく、復習に時間がかからない教科に変身します。応用問題に関しては網の隙間を縫う(網で拾いきれない知識を聞いてくる)ような問題はほぼありません。網の完成後は、問題で扱う対象が網のどこに存在するものなのか、照らし合わせをする訓練をするだけでよく、負担はそう多くないはずです。

特に受験直前期は各教科の抜けチェック、最後の詰め込みや苦手教科の演習等やることが山盛りです。私は数学の演習に膨大な時間が取られたほか、化学の有機無機分野での知識抜けがぽろぽろ発生してイラつかされる経験をしています。物理に関しては私自身が二次試験レベルまでやらなかったので確実なことが言えないのですが、友人に関していえば応用に入るほど複雑な式のつながり・組み合わせに苦しむ場合が多かったようです。一方で生物に関しては、直前期に関しては一番時間がかからなかった教科でした。「高校全体を通じた必要勉強時間」は確かに長いかもしれませんが、「受験直前期の必要勉強時間」については他教科に対して大きなアドバンテージがあるように感じています。

大学の生物系の授業はかなり楽

生物の悪評・欠点パートで「大学入学以降の物理・化学で苦労する可能性」を述べましたが、生物系の教科に関しては真逆のことが言えます。先ほど述べたように生物は各分野が直接・間接につながりあった学問です(どの教科もそうといわれればその通りですが)。病気や筋肉の名前は知らなくとも、高校時代3年間生物の基本をみっちりやった状態で学び始めるのと、基礎と同時にそういった事項も習い始めるのでは理解の速さはもちろん、事象と原理の連結への意識や理解の深さの違いが顕著に生じます(もちろん大学から生物を始めてなお優秀な方はたくさんいますが、一般的にという話です)。より具体的な話をすると、私の大学1年生時の必修であった生命化学の授業に関しては、授業の半分以上は高校で既習である状態でした。即ち、大学での定期試験に向けた勉強時間の配分という点で、生物選択であったことは大いに有利に働きます。

ここで「特に医学系」と限定していることには理由があります。一括りに「生物系の学科」といっても、生物に対するアプローチは複数あります。特に理学系や工学系の生物の学科であれば情報や物理の観点から生物の研究をしている研究室は多くありますし、化学に近い生物の学科であれば化学を扱うには物理的観点も必要になるのは述べた通りです。したがって「生物選択である」ことが生物研究において返り見ると必ずしもプラスにならないこともあります。生物がやりたいから生物を選択するといった安直な考えではなく、「生物情報学がやりたい」といったように、自身が生物に対してどういったアプローチをとりたいのか、それに何が必要なのかを考える必要があります。一方で医学系(医学部医学科・看護学科・獣医学科等)の学科においては、基本的に大学の座学でやることは「既存の生物的現象の暗記及び理解」であり後々まで物理が影響してくるケースはあまりありません(特に臨床志望の場合です。研究の場合はこれに限りません)。そういった意味で、「医者になりたい」「看護師になりたい」というようにそういった方面の目標がはっきりと決まっている方に関しては、高校で生物を履修しておいた方が大学入学後に関していえばよいということになるのではないでしょうか。

最後に

繰り返しになりますが以上の意見は私の主観ですし、私が生物が好きで得意であったことからかなりのバイアスがかかっていることは認識しておいてください。もう一つアドバイス夏休み等を利用し、物生選択前に基礎でない物理・生物を実際にやってみることを強くお勧めします。数学や理科基礎は理科各科目の得意不得意の指標にある程度はなります。しかしその法則にあてはまらないケースも相当数存在します。特に悩んでいる人は印象だけで判断せず、「実際はどうなのか」を身をもって体験しましょう。私がこの記事で最も大切だと思うことを最後にもう一度列挙します。

  • 物理を選ぶにせよ生物を選ぶにせよ、周囲の意見に流されるのではなく自身の適正・進路を十分考慮したうえで選択しましょう
    生物選択にも物理選択とは異なる利点が存在することは述べた通りです。実体のない偏見を捨てて、そのうえで自身の適正・進路に従った選択をしてください。

  • 科目選択時には総合のコストという概念をある程度意識しましょう
    苦手、嫌いな科目に囲まれて受験に臨むのは、おそらく皆さんの想像以上にしんどいです。

  • 生物に限らず、学習時は網目状の理解を心がけましょう
    科目選択とは直接関係しませんが。生物における網目状理解ばかり強調してしまったので再び言いますが、点を物量戦で暗記する戦法には限界が来ます。事象と事象の関連性には常に意識を払いましょう。

後書き

元々英語のライティング練習のためにブログを開設しました。ただ最近インプットの勉強が多すぎるように感じ、アウトプットの一環として日本語記事にも手を出すことにしました(ただ英語ライティング練習も続けたいですし、この記事もいつか英訳したいです)。アウトプットなら生物的事象の紹介でもしろという話なのですが、最初の記事ですしある程度自信と実感をもってかけそうなトピックを練習として選びました。今後日本語記事に関しては、生物その他の勉強法の記事及び漫画紹介の日本語記事版も書いていきたいです。つたない文章を読んでいただきありがとうございました。

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