utete's comic and biology (ウテテの漫画と生物)

Mainly written in broken English. Mainly about comic books or biology. 最近日本語記事も書き始めました。

おススメ小説・漫画: 雨の日も神様と相撲を

※:今回は城平京さんによる原作小説「雨の日も神様と相撲を」および戸賀環さんによるコミカライズによる作品についてをまとめて紹介しています。後述しますが大筋のストーリーは同じです。

概要・作品テーマやキーワード

本作品は一言でいうと青春ミステリーです。タイトルの「相撲」という字面から敬遠してしまう方もかなり多いかと思いますが、作中で相撲はあくまでもギミック的な要素であり知識どころか相撲そのものに全く興味のない人でも楽しめます。またスポコン的な話でも全くありません。

特に

  • ミステリーでもライトなものが好きな方

  • 恋愛要素がある作品は好きだが、ストーリー全面に恋愛を強く押されるのは苦手な方

には大変お勧めできます。また、男性向け、女性向けというよりも性別関係なく楽しめる作品だと思われます。
後述しますが、個人的には小説→漫画版 の順番で読むことを強くお勧めします。

大まかな話の流れ

主人公である文季の両親は相撲の大ファンであり、文季も幼いころから相撲を続けてきました。文季がその両親を亡くし、警部補である叔父を頼って久々留村に転校してきたところから物語が始まります。
久々留村は相撲を好むカエルを神様として尊ぶ、変わった風習のある村でした。そこで彼はカエルに仕える一家の娘であり、カエルの声を理解できるという少女、真夏に出会います。相撲経験を買われてか、真夏に頼まれた文季は、カエル相手に相撲の指導を行うことになります。さらに時を同じくして、村で不審な死体が発見されます。文季はカエルへの相撲指導・叔父との会話を通じた捜査への関与を同時に行うことになってしまいました。

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を コミック 1-2巻セット

雨の日も神様と相撲を コミック 1-2巻セット

※原作小説は1巻完結で、漫画は2021年1月5日に連載が完結したばかりで、巻数でいうと3巻完結です。漫画3巻は5月発売とのこと。
Caution! 以下(深刻ではないものの)多少のネタバレが含まれます!

私がこの漫画・小説を勧める理由

1. 話の本筋が複数本走っており、一方で最後はきれいにまとまる

概要でも書いた通り、本作品は「刑事事件」という現実的な課題と「カエルへの相撲の指導」という非現実的な課題が同時に進行します。独立したように見える複数事象を小説たったの1巻(漫画は3巻)で扱って大丈夫?となるのですが、最後には「なるほど!」と思う形でそれぞれが結び付き、非常に綺麗な解決を迎えます。
私見ですが、解決・まとめの綺麗さは数ある作品の中でも相当なものだと感じます。ただしその分といいますか、刑事事件そのものはとびぬけて凝ったものではないので、「本格的な推理作品が好み!」という方には少し物足りないかもしれません。

2. 各々のキャラクターが非常に可愛らしい

これは特に漫画版で顕著かもしれません。まず不気味な印象の強いカエルですが、特に漫画版では一つ一つの挙動が人間らしく、本当に親しみが持てます。カエルの形をした小人、といったイメージでも良いくらいです。
真夏は小説版と漫画版でかなり印象が変わる人物です。いずれにおいても感情は抑え気味だが気は強め、といった印象でしょうか。ただし漫画版だと表情がありありと描写される分、序盤から可愛らしさが見て取れます。小説版では序盤は「よくわからない子だなぁ」という印象ですが、「話が進むにつれて明かされる性格」という観点では漫画版よりむしろ楽しめるかなぁとも思います。
文季は一貫して「冷静沈着」といった感じです。デリカシーの欠けた発言も散見しますが、一方で頼まれごとは断らないなど人の好さ、またここは譲らない、という芯も持っています。この記述だけではかわいげがないようにも思えますが、体形の不利に由来する劣等感を抱える中で最善を尽くそうとするのがとても健気です。ネタバレになるので詳細は記述しませんが、文季は文季でかなり「良い」挙動をしています。

3. 一作品で二度おいしい

1で「最後に綺麗にまとまる」という話をしました。この作品においては、種明かしによって序盤・中盤でのキャラクターの動きや事件の見方が全く変わる、というのが非常に顕著です。したがって、1度読み終わった後最初から読み直してみると新しい作品を読んでいるかのように感じられ、それがすごく楽しいんです!

なお2周の仕方について、私はまず小説を最後まで読み、続いて漫画版で1から読み直すのが最も作品を楽しめる読み方だと思っています。

最初に書いた通り、原作小説と漫画版とではストーリーそのものはほとんど同じです。また話が一貫して文季視点で語られている、というのも両者で共通です。
ただし漫画版では表情や挙動がかなり詳細に描かれており、文季以外の登場人物(とカエル)の様子や心情が序盤からかなり読み取れます。これは序盤から人物たちに親しみを持てるという意味では大変良いのですが、一方で種明かしによる驚き、楽しみが少し薄れてしまうような気もしています。
一方で小説は表情が見えない分読者は「文季が見てそれを解釈したもの」のみを受容します。つまり視点がより主観的になるわけです。結果序盤で「この人は何をしたいのか」といったモヤモヤを抱えることが増えるわけですが、逆にそれは文季の心情により寄り添える・話に入り込めるともいえるわけです。したがって小説版では最後の種明かしで「うわぁっ」となる度合いがより大きくなります。

これを踏まえ、私が小説版を先に読んでほしいのは「種明かしを物語にどっぷり浸かった状態で楽しんでほしいから」です。また2周目に漫画版を後に読んでほしいのは「種が分かった状態では、得られる情報が多い媒体から同じストーリーを観測する方が『お前こんなこと考えてやがるなぁ!』なんていう楽しい瞬間が増えるから」です。

もちろんこれは私の主観であり、お金のこともありますから、いずれかの媒体でのみ2周するというのも当然アリです。また小説が、動きが見えないストーリーが苦手だなぁ、という人は序盤から話に乗りやすい漫画版から始めたほうが良いかもしれません。

結論

「漫画版」「小説版」と話が行ったり来たりで「どっちかにまとめてくれよ!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか…。ただ「雨の日も神様と相撲を」は展開した媒体ごとでそれぞれの良さを引き出した、「メディアミックスの醍醐味を詰め込んだ」ともいえる作品だと思っています。本編そのものもですが、それぞれでの違いについても一人でも多くの方に楽しんでいただけると非常に嬉しいです。 この記事を通じて「雨の日も神様と相撲を」に興味を持って下さる方が一人でもいらっしゃれば幸いです。ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

追記

漫画版についてはアプリ版およびweb版のマガジンポケットで2話まで無料で読めます。少しでも「興味あるなぁ」と思った方はまずはそちらで読んでみてはいかがでしょうか?ただ、最後まで読むと印象がガラッと変わる作品なので、「冒頭あまりしっくりこないなぁ」という方でも作品全体は楽しめる可能性がかなりあることは留意していただけると幸いです。

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